今年度の研究により以下の点が明らかとなり今後の研究の方向性が示唆された。 ヒト妊娠初期脱落膜細胞培養系にインターロイキン-1(IL-1)を添加することにより誘導されるプロスタグランディン(PG)H2合成酵素と、それに伴うPGの産生促進は、培養液中へのプロゲステロンあるいはデキサメサゾンの添加した場合、阻害することが可能であった。これは、妊娠により高値をとるプロゲステロンや副腎性ステロイドホルモンがPGH2合成酵素の誘導を阻害することにより、脱落膜によるPG産生またそれに伴う子宮収縮などを防止している可能性を示唆し、初期妊娠の維持機構や陣痛発来機構におけるPGH2合成酵素誘導の関与の可能性を示唆するとともに、その機序は一般の炎症反応と類似したものの可能性があると思われる(Prostaglandins:in the press)。 ヒト胎盤や絨毛に大量に含まれ、妊娠中のその存在意義が興味の持たれるHGF(hepatocyte growth factor)の脱落膜細胞におけるアラキドン酸代謝およびPG産生に及ぼす影響を検討したところ、IL-1とはことなり、PGH2合成酵素の誘導作用は明らかではないものの、強いPG産生促進作用を有することが明らかとなり、PGH2合成酵素の誘導をかいさない別の機序による子宮内におけるPG産生調節機構の一端をになう可能性が示唆された(日本受精着床学会雑誌印刷中)。
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