研究概要 |
平成5年度はまず研究の基礎的段階を行つた。3頭の山羊新生仔を用いて、肺動脈血流量の基礎値と低酸素状態での変化を調べた。新生仔の肺動脈血流量はpO2が107.9mmHgの時は110.7±1.5ml/minで、低酸素状態にしていくと肺動脈血流量はpO2が69.8mmHgの時135.1±2.2ml/min,34.8mmHgの時138.6±3.0ml/min,25.1mmHgの時127.0±1.8ml/minへと増加した。胎仔の実験は胎仔2頭を用いて行った。1頭は胎仔の状態が不良でpH7.012,pO234.9mmHg,pCO247.2mmHgとアシドーシスの状態であった。この胎仔での肺動脈血流量は251.7±3.9mmHgで子宮内で100%酸素による換気によって胎仔動脈血pO2は23.7mmHgから、51.6mmHgに増加し、肺動脈血流量は251ml/minから223ml/minへと僅かに低下しただけであった。もう1頭の胎仔は良好な状態で動脈血pH7.277,pO227.7mmHg,pCO245.0mmHg,肺動脈血流量は116.4±7.5ml/minであった。この例では100%酸素による換気によってpO2は30分後93.4mmHg、60分後89.7mmHgまで増加し、肺動脈血流量もそれぞれ371.1,377.5ml/minまで増加した。子宮内人工換気の間、胎仔動脈圧の低下と静脈圧の増加、心拍数増加が認められた。得られた新生仔、胎仔の肺動脈血流量の値は諸家の報告と一致し測定法に問題がないことが確認された。今後子宮内換気時の酸素濃度を変えて低酸素時の胎仔肺動脈血流量の変化を調べる必要がある。
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