研究概要 |
昨年までの100%酸素での子宮内換気実験をふまえて,今年は妊娠日数136±3日(term145日)の3頭の山羊胎仔を用いて実験を行った。まず肺動脈血流(PAF)増加作用のあるアセチルコリン(Ach)の投与実験を行い、次に一酸化窒素(NO)の阻害剤であるNG-monoethyl-L-arginine(L-NMMA)の前処置によるAchと子宮内換気によるPAFの増加への影響を調べた。母獣の麻酔下に胎仔にカニュレーションを行い、肺動脈に超音波血流計のプローブを装着した。胎仔の静脈カテーテルを通してAchの投与を行った。Achの投与量は2,3,5μgとし、bolusで15分毎に投与した。100%酸素による子宮内換気でのPAF増加は最大98.7±67.4%の増加率であった。これに対しAchによるPAFの増加率は2μgで11.7±6.1%,3μgで14.2±9.0%,5μgで18.2±4.0%と投与量の増大について増加率が大きくなった。L-NMMAの前投与によってAchのPAF増加作用は有意に抑制され、5μg投与で1.5±5.0%の増加にとどまった。(t=4.52,p<0.05)またL-NMMA投与後に子宮内換気を行なった所、pO2の増加にも拘わらずPAFの増加は約30分間抑制された。Achと子宮内換気によるPAFの増加がNO阻害剤によって抑制されたことから、出生時のPAFの増加にNOの関与が大きいことが示された。
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