卵胞が発育するためには、顆粒膜細胞の増殖と卵胞液の貯溜が必須である。しかしそのいずれに関してもまだ明かにされていない。そこで本研究は、FSHによる顆粒膜細胞の増殖の機序を解明する目的で、early-immediate proto-oncogeneであるc-fosに着目して、FSH投与後c-fosが顆粒膜細胞に確かに発現されていること、さらに閉鎖卵胞ではなく発育しつつある卵胞の顆粒膜細胞にc-fosが発現されていることを明らかにした。 幼弱雌ラットにPMSG10IUを投与し2日後に卵巣を摘出した。そして卵巣を細切し、テフロンホモゲナイザーを用いてすりつぶし、CsClにてRNAを抽出して、オリゴ(dt)セルロースカラムを用いてmRNAを選択し、c-fosプローブを用いて通常のNorthern blottingを施行した。対照には生食水を投与したラットを使用した。その結果、PMSGを投与したラット卵巣においてc-fosの発現は有意に増加していた。さらに同様にして得た卵巣を固定した後、c-fosに対する単クローン抗体を用いて免疫組織学的検討をしたところ、種々の段階の発育卵胞で顆粒膜細胞にc-fosが発現しているが、顆粒膜細胞核のpyknosisを呈する卵胞(閉鎖卵胞)ではc-fosの発現が無いか、あるいは低下していることが明かとなった。 今後はブタ顆粒膜細胞を培養して、種々の細胞増殖促進効果を有する物質を添加して培養した際に、c-fosの発現が促進されるか否かを、同様の方法で検討する予定である。
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