子宮体癌は性ステロイドホルモン依存性の腫瘍で、エストロゲン(E)によって増殖が促進されることが知られている。この性ステロイドホルモン依存性を分子レベルで解明するために、子宮体癌細胞株にEを投与し、細胞増殖とc-erbB-2の変化を検討した。培養細胞として高分化型内膜腺癌由来のIshikawa株(エストロゲンレセプター(ER)・プロゲステロンレセプター(PR)共に陽性)及び中等度分化型内膜腺癌由来のOMC-2株(ER・PR共に陰性)を用い、これらの増殖とc-erbB-2のDNA増幅・mRNA発現に対するエストラジオール(E_2)の影響を検討した。生体内現象を想定し、添加実験は生理的濃度(10^<-8>M)にて行った。Ishikawa株ではE_2によって細胞増殖が促進されたが、有為な差が認められるようになるのは7日以降の遅い時期であった。一方OMC-2株では21日間を通してコントロール群と有意な差は認められなかった。c-erbB-2 mRNA発現については、Ishikawa株では、コントロール群は14日目以降発現が減少したが、E_2投与によって一定レベルのc-erbB-2発現が保たれた。一方OMC-2では、E_2を投与してもコントロール群と同様に発現は減少した。すなわちIshikawa株においてはE_2は細胞増殖・mRNAの発現を促進したが、OMC-2株ではE_2は細胞増殖にもmRNA発現にもほとんど影響しなかった。なおDNA増幅・再構成等の変化はIshikawa株でもOMC-2でも検出されなかった。 以上の結果より、子宮体癌細胞株ではE_2によるc-erbB-2のmRNA発現並びに細胞増殖の制御に関与しており、その制御にはERが関与している可能性が推察された。またE_2による制御は比較的遅い時期に行われるものと推察された。
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