研究概要 |
(1)細胞内プロテインキナーゼ(PK)C活性剤である12-0-Tetradecanoyl phorbol acetate(TPA)はヒト卵巣癌細胞株(2008)のシスプラチン(DDP),カルボプラチン(JM-8),254-Sに対する感受性をそれぞれ2.6,2.8,2.3倍増強させ,TPAの薬剤感受性増強作用は,これらの白金製剤に共通する機序によるものと考えられた。(2)TPAの薬剤感受性増強機序を解明すべく本年度は,細胞核内DNAへの白金付加量につき検討を行なった。本実験は一本鎖DNAの隣接するグアニンへの白金の添加量をHPLC解析により定量化し,TPA処理細胞とコントロールとの間で比較を行なうものであり,TPA処理細胞に軽度の白金付加量の増加を認めた。(1.5±0.3倍,P<0.05)。この増加はTPAの3倍弱に及ぶ白金製剤感受性増強能を説明するには乏しく,更に他の未知の機序が関与しているものと考えられた。(Br.J.Cancer 69:1994)(3)(1)で検討した白金製剤は構造上同じcarrier-ligandを有していることから,TPAの作用はこのligandに特異性を有する可能性がある。そこで,これら3者とは全く分子構造の異なるDWA2114に対する2008細胞,及び,そのDDP耐性細胞(2008/C13^* 5.25)の感受性を検討した。それぞれの細胞における50%細胞発育阻止濃度(IC50)は2008で118.9±9.8μM2008/C13^* 5.25で42.6±1.8μMと他の3者の白金製剤と異なり、DDP耐性細胞にcollateral sensitivityを示した。(4)更にTPA接触実験では、2008では感受性に変化なく,20081C13^* 5.25では,1.7±0.2(SD)倍(N=4;P<0.05)のDWA2114R耐性化を示し,先の3つの白金製剤とはまったく異なるパターンを示した。(5)TPAのDWA2114R感受性制御能の差異を検討すべく両細胞のPKC Iso-typeの分布を検討した。その結果,両者にはPKC_αとPKC_ζのみが全く同様に認められ,TPA反応の差はPKC分布の差によるものではないことが判明した。
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