昨年から行っていた血管収縮剤投与後の鼻粘膜収縮の観察結果をAm.J.Rhinologyに発表した。オキシメタゾリンやフェニレフリンは、粘膜に存在する受容器に直接作用し、α_1拮抗剤によって殆んど完全にブロックされるところから、収縮に主として関与するのはα_1作用であることが明らかとなった。しかしながら、エピネフリン投与後に生じる遅発性腫脹はヨヒンビンの前投与によって抑制されることから、この現象に関与するのはα_2作用であろうと推測された。 従来の鼻腔通気度測定法とAcoustic Rhinoinctryとの比較をなすべく、鼻腔モデルを作成して検討を行った。圧と流量の関係として示される鼻腔抵抗値は、測定点によって同一人でも異なることが分かっているが、標準曲線を設定して全体で比較すればパーセントで表示可能である。このパーセントと抵抗を形成する間隙の断面積が極めて高い相関を示すことを見い出した。また、このパーセント表示は、圧を基準として比較した場合のみ成立する。Acoustic Rhinometryでは鼻腔の断面積を表示するから、任意のモデルが作成できる。Acoustic Rhinometryのグラフでnotchを示す部位に、狭い間隙を2ケ所以上設置すると、その間隔によって全体の通気度は複雑に変化すること、その前後の間隙の広さ、つまり、上流や下流の流れの影響が強いことが分かった。Acoustic Rhinometryで最小断面積を重視する試みもあるが、単一の値で通気度を代表させることはできない。 抗原あるいはchemical mediatorsによる腫脹は複雑で、かならずしも受容器を介する直接作用とは言い難い。アレルギー反応時に発現する鼻粘膜の腫脹は、血管壁からの漏出、壁の弛緩による血液の鬱滞が主体ではあろうが、複雑な過程を経ていることが推測された。この面についての結論は保留したい。
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