研究概要 |
今回使用したacoustic rhinometryは、一定間隔毎の鼻腔の断面積を測定することができる。入射音と反射音との関係を処理して、外鼻孔からの距離に応じた断面積を計算し表示したものをarea distance curveと呼ぶ。被検者への侵襲が殆どなく測定時間も短いために、計測を何回でも繰り返すことができ、断面積の積分によって容積も知ることができる。この方法を用いて鼻粘膜の収縮と腫脹を計測し、その機序を解明する手掛かりとした。 oxymetazolineやphenylephrineは粘膜に存在するreceptorに直接作用して収縮をおこして、拮抗剤の前投与によって殆ど完全にブロックされる。epinephrinne投与後に生ずる遅発性腫脹は、yohimbineの前投与によって抑御され、この現象に関与するのはα_2作用と推測された。これらの検討は鼻腔の距離を8cmと仮定して4等分し、最先端の2cmは鼻前庭を含むために除外し、残りの部分を前部、中央部、後部として容積を求めてその変化率を比較した。 粘膜腫脹の観察は、histamine,leukotriene,抗原抽出液をしみ込ませた濾紙discを下鼻甲介先端に貼付し、最初の10分間は1分毎、その後5分毎に計測して作成したarea distance curveを検討した。貼付側の鼻腔は、空間容積が減少して粘膜腫脹があったことは判断できたが、反応が不安定で、複雑な機序が関与すると推測された。 アクリル板に直径の異なる同心円を設け、これを積み重ねて管とし、断面積と通気度との関係を検討した。鼻腔のarea distance curveを模倣して再生した模型は、鼻腔より遙かに良好な通気度となり、模型自体のarea distance curveは鼻腔のそれとは異なった。。このことから、断面積の連続から成る管腔を通過する際の通気抵抗は、種々の空気力学的要素の影響を受けていることが明らかになった。
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