平成5年度は、免疫組織化学的方法およびin situ hybridization法を用い主として内耳におけるグルタミン酸レセプターの種類、分布、遺伝子発現に関し検討した。その結果、ラットおよびモルモットのラセン神経節、前庭神経節の神経節細胞においてNMDAR1mRNA、GluR2、GluR3mRNAの発現が認められた。免疫組織化学的にも、これら神経節細胞においてGluR2/3陽性反応が確認された。NMDAR1mRNAがほぼすべての神経節細胞に発現していること、GluR2/3免疫陽性反応もまたほぼすべての神経節細胞において陽性であったことから、ほとんどの細胞ではAMPA型レセプターとNMDA型レセプターが共存し、機能している可能性が示唆された。内耳求心性第一次ニューロンにおいて、種々のグルタミン酸レセプターが存在することより内耳においてグルタミン酸が神経伝達物質のひとつとして重要な働きをしていることが明かとなった。神経節細胞にどのようなグルタミン酸入力があるかに関しては以下の4つの可能性が考えられる。1、感覚細胞からの求心性の入力、2、遠心系神経線維より、axo-dendriticな入力、3、中枢側でのグルタミン酸作動性神経からのaxo-axonicな入力、4、中枢側神経終末におけるautoreceptorを介する入力、を受けている可能性である。いずれの部位にレセプターが局在するかに関しては、引きつずき検討する予定である。
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