平成6年度は、免疫組織化学的方法およびin situ hybridization法を用い主として内耳におけるグルタミン酸レセプターの種類、分布、遺伝子発現に関し検討した。その結果、ラット、モルモットのラセン神経節、前庭神経節の神経節細胞においてNMDAR1mRNA、GluR2、GluR3mRNAの発現が認められた。免疫組織化学的にも、ラット、モルモット、サルの神経節細胞においてNMDAR1、GluR2/3陽性反応が確認された。NMDAR1およびGluR2/3免疫陽性反応はほぼすべての神経節細胞において陽性であったことから、ほとんどの細胞ではAMPA型レセプターとNMDA型レセプターが共存し、機能している可能性が示唆された。また霊長類の内耳においても同様の神経伝達機構が存在する可能性が示唆された。内耳求心性第一次ニューロンにおいて、種々のグルタミン酸レセプターが存在することより内耳においてグルタミン酸が神経伝達物質のひとつとして重要な働きをしていることが明かとなった。グルタミン酸が感覚細胞の神経伝達物質として放出されているとすれば放出されたグルタミン酸はglutamate transporterにより速やかに代謝されなければならない。内耳にどのようなグルタミン酸の代謝経路があるかに関して検討するためglutamate transporterに対する抗体を用いてその分布を調べた結果、支持細胞に陽性反応を認めたことより支持細胞がグルタミン酸の代謝に重要な役割を演じていることが明かとなった。
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