研究概要 |
ウイルス感染と滲出性中耳炎との関連については従来より検討はされているが、中耳貯留液からのウイルス分離は成功しておらず、一方貯留液中の種々のウイルスに対する抗体の存在は確認されているが、血液由来の可能性もあり、ウイルスが関与するという直接的証明とはなっていない。Hendersonらの14年間にわたる長期の疫学的検討では滲出性中耳炎発症と相関する上咽頭分離微生物は細菌でなくウイルスであり特にRSウイルスの高い相関が示されている。今回RSウイルスを貯留液中に検出する目的および貯留液中のサイトカイン遺伝子発現を検討する目的で、感度、特異性にすぐれかつ少量のゲノムを増幅して検出することが可能なPCR法を採用し、検討を行なった。 1.滲出性中耳炎貯留液中のRSウイルスのゲノムの検出では34例中21例にRSウイルスゲノムが検出された。 2.上咽頭ぬぐい液からのウイルスの分離培養では、18例の検討で12例にRSウイルスが分離陽性で、このうち9例の中耳貯留液中にRSウイルスゲノムが検出された。RSウイルス分離陰性の6例中1例で中耳貯留液中にRSウイルスゲノムが認められた。 3.滲出性中耳炎貯留液中のサイトカイン遺伝子発現については、5症例の滲出性中耳炎貯留液より抽出したRNAについて、サイトカイン遺伝子の発現をPCR法にて検討し、多くの貯留液で、IL-1β,IL-3,IL-5,IL-6,TNHαの遺伝子発現が認められた。以上のことから、RSウイルスと滲出性中耳炎との関連が強く示唆されるとともに、種々のサイトカインによるサイトカインネットワークの形成が滲出性中耳炎の病態に関与するものと考えられた。
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