従来の双眼顕微鏡や鼓膜ファイバーでは詳細な観察が不可能であった中耳腔内を、汎用細径内視鏡FVS-3000のミニスコープ(外径0.75mm)により観察した。対象は各種の中耳炎症性疾患、中耳耳小骨奇形、耳硬化症などである。観察経路は鼓膜穿孔部、鼓膜切開部、あるいは経耳管とした。 本研究の目的は非侵襲的な鼓室内の術前観察により、中耳疾患の病態解明の一助とすること、手術適応がある疾患では術式選択の資料とすることである。さらに、術後経過の観察に用いた。 鼓膜穿孔のある症例、既手術耳で乳突腔が外耳洞に開放されている症例では経外耳道的に観察を行った。耳小骨の保存状態、粘膜病変、開放乳突腔では深部残存蜂巣が観察できることがわかった。ただし、中耳腔内や外耳道の分泌物がミニスコープ先端に付着すると、たとえ微量でも観察不能となった。また、ミニスコープ先端に可動性がないため、依然、観察不能な部位もあった。 鼓膜穿孔のない中耳奇形や耳硬化症では前鼻孔から鼻腔、さらに耳管を経由で鼓室内にミニスコープを挿入して観察を行った。ここでも分泌物付着の問題が認められた。また、耳管形態に個体差があり、かつミニスコープの柔軟性にも限界があって、症例によってはミニスコープを中耳腔内に挿入できないこともあった。 購入した機種の画像解像力については、操作中のビデオモニターによる観察、理解は可能でも、写真や記録としての鮮明度には多少問題があり、今後の検討を要すると思われた。
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