突発難聴の原因のひとつに蝸牛の血流障害があるが、外リンパ瘻の疑いにて鼓室開放術を行った8例にレーザードップラー法により蝸牛血流の測定を行った。アドバンス社のレーザードップラー血流計(ALF21)を用い、できるだけ骨の血流成分を拾わないように受光ファイバーと送光ファイバーとの距離を広げ1mmとした。プローブの外径は1.7mmである。全例において蝸牛血流からと思われる搏動性の信号が捕らえられた。これは8例すべてが完全聾ではなく何らかの蝸牛機能が残っていたためと考えた。 二酸化炭素(CO_2)の蝸牛血流への影響を定量的にみるために全麻で手術を行った症例においてendotidal CO_2と蝸牛血流との関係を調べた。一時的な呼吸停止でendotidal CO_2を上昇させてもはっきりとした蝸牛血流の上昇を認めることはできなかった。これは全麻中のため血中酸素分圧を高く維持したため酸素による蝸牛血管の収縮作用のためCO_2の蝸牛血管への拡張作用が遮蔽された可能性はあるが、いずれにしても蝸牛血管の反応性をみるためにCO_2を投与することはあまり適切ではないことがわかった。レーザードップラー血流計は値を相対値で示すため蝸牛血流の状態を検索するためにはある条件を負荷して蝸牛血流がどの程度変化するかを知ることが大切である。その条件としてCO_2以外のもの、たとえば岬角電気刺激、カロリック検査のような温熱刺激などを考慮しているところである。
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