ファイバースコープの開発と普及により、喉頭は日常の外来診療でも容易に観察されるようになった。さらに光源としてストロボスコープを用いると声帯の形態的な観察のみならず、声帯振動といった機能も直接目で観察することが可能である。ところが実際喉頭を手術しようとすると大がかりで、現在一般に普及している喉頭微細手術は全身麻酔科に喉頭直達鏡を挿入して手術しなければならないのが現状である。今回のプロジェクトにおいて我々は、テレビモニターを利用することにより局所麻酔科での喉頭微細手術を開発した。 方法はまず通常の関節喉頭鏡下の手術と同様喉頭をキシロカインビスガス、及びキシロカインの噴霧及び塗布によって十分に麻酔する。助手はストロボ光源に接続した吸引付き喉頭ファイバーを経鼻的に挿入し、その像をCCDカメラを用いてモニター画面に映し出す。患者に舌を引いてもらうことで術者の両手は自由になり、メスや鉗子、注射針などが自在に扱える。この術式の開発に当たって我々はあらかじめ視野を妨げず、操作性の良い専用のメスや鉗子、注射針などを開発した。 本法では、テレビモニターを利用することにより術野が十分観察できることと、術者の両手が自由になるため、従来の喉頭微細手術と比較しても劣らぬ程の繊細な手術操作が可能である。そのうえ、ストロボスコープを併用することにより患者の声や声帯振動をモニターしながらの手術制御が可能であること、また外来患者に可能など喉頭微細手術にない利点も兼ね備えている。 現在まで本法により多数の声帯ポリ-プ、結節及び嚢腫の切除や喉頭癌の生検、及び浮腫状声帯に対するステロイドの喉頭注入などを行っているが、いずれも良好な臨床成果を挙げている。
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