ラットの口腔内に照射野を絞り、コバルトを20Gy/Dayで2日間、合計40Gy照射した難治性口腔咽頭潰瘍モデルで活性酸素との関連について検討した。口腔咽頭粘膜には活性酸素消去酵素が存在し、実験的潰瘍では潰瘍の周辺に好中球の浸潤が多く、組織障害性の強いハイドロキシルラジカルの発生が認められた。さらに血管鋳型では毛細血管網の増生および拡張があり、組織切片で血管内皮への好中球の接着も観察された。また、ヒト難治性口腔潰瘍の組織でも潰瘍周辺には多数の好中球の浸潤が見られた。 以上のことから好中球から発生した活性酸素が潰瘍の形成あるいは憎悪に関与している可能性が示唆された。また、ヒトの難治性潰瘍でも潰瘍周辺には好中球の浸潤が見られ活性酸素の発生および活性酸素による生体膜障害が起こっている可能性が充分考えられたので、口腔咽頭癌の放射線照射例で照射のために摂食障害の可能性の高い症例でラジカル消去剤としてビタミンEを連日100mg筋注投与(患者が疼痛で拒否するまで)したが自覚的にも他覚的にも有意に潰瘍の防御は出来なかった。脂溶性ビタミンの吸収の問題があると思われるので今後は投与法に付いて検討する余地があると思われた。
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