1)カロリック刺激に対する迷走神経背側核ニューロンの応答は検討した例の70%において興奮性であり、その反応も同側および対側刺激で同様であった。 2)視床下部室傍核ニューロンはカロリック刺激に対して興奮性あるいは抑制性に応じるが、これらの反応は前庭神経切断または前庭迷路破壊によってほぼ消失することから、これらの反応は前庭由来のものであると判断された。またH_1ブロッカー静注によって70%の例でその反応が減弱・消失あるいは逆転し、H_2ブロッカー静注では、50%が反応減弱をきたした。このことは前庭神経核から視床下部へ前庭情報が上行する過程で前庭情報処理に脳内ヒスタミン作動系が関与していることを示唆している。 3)代表的な自律神経出力である血圧変動と室傍核ニューロンの活動とはカロリック刺激時に密接な関係を持つことが判明したが、視床下部前部・中部を電気破壊するとカロリック刺激を加えても血圧変動はほとんど認められなくなった。このことは前庭-自律反射の遂行には視床下部が不可欠であることを示している。また小脳室頂核を電気破壊前後にカロリック刺激を加え、血圧変動を比較したが、両者間には有意の差異を認めず、前庭-自律反射の発現には前庭神経核から脳幹網様体を介して視床下部へ上行する経路が最も重要であると考えられた。
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