研究概要 |
前庭神経核亜核電気刺激に対するモルモット後視床下部(PH)ニューロンの応答について検討した。上核刺激では両側性に興奮性に応じ、外側核刺激では対側性に応じるが、内側核、下核刺激には応じなかったので、視床下部に上行する前庭情報は上核、外側核を経由すると考えられた。カロリック刺激を加えたときにPHと室傍核(PVN)のニューロン応答について検討した。60%が興奮性あるいは抑制性に応答し、温刺激でも冷刺激でも反応の方向性は一致していた。よって視床下部ニューロンは回転方向の検知は行わず、刺激の有無のみを検知していると思われる。また、これらの反応は前庭神経切断、前庭迷路破壊によって消失することから、前庭由来と考えられる。またH_1, H_2ブロッカー静注によって70%の例でその反応が減弱・消失・逆転し、これは前庭中枢路を情報が上行する過程に脳内ヒスタミン作動系が関与することを示唆している。回転刺激を連続的に与えると63%のPHニューロンにおいてその自発放電頻度が刺激開始数分後より変化した。刺激終了後も数分間変化は持続した。このことは動揺病症状の発現および消失過程の経過と合致する。カロリック刺激時の血圧変動とPVNニューロン活動変化との関係についても検討した。神経活動が変化した例では血圧低下がほぼ全例におこったが、神経活動の変化がなかった例では血圧低下は少数例に留まり、PVNニューロンの活動性変化と血圧変動に代表される自律神経活動とは密接な関係にあることが示唆された。またこの反応は視床下部破壊で消失したが小脳核破壊では変化しなかった。よって前庭-自律反射の発現には前庭神経核から脳幹網様体を介して視床下部へ上行する経路が最も重要と考えられた。カロリック刺激に対する迷走神経背側核ニューロンの応答は70%において興奮性である、その反応も同側および対側刺激で同様であった。
|