研究課題
低周波純音(バイアス音)の決まった位相にテスト音を同期させることは、当初予定したマニユアル操作ではきわめて困難であることがわかつた。従つて本年度はパーソナルコンピュータを用いた2音刺激系のプログラムの作成に時間を費やした。この音刺激プログラムにより、低周波純音に対し45°或いは36°間隔でトーンバーストまたはクリック音を電気的に重ね合わせることが可能となつた。現在、鼓膜直上で十分な音圧のしかも歪みのないバイアス音を得るための閉鎖式音刺激系の完成を急いでいる。モルモットの内リンパ水腫モデルにおいて、対照側に比較して内リンパ管閉塞側の有意なAP(聴神経活動電位)閾値上昇とCM(蝸牛マイクロフオン電位)減少を確認した。これらの変化を引き起こすメカニズムの一つにEP(蝸牛内静止電位)低下が関与するが、EPの局所的、また一時的低下の実験モデルとして、酢酸の正円窓投与がAP閾値に及ぼす影響を調べた。来年度には本モデルにおけるバイアス効果の変化を検討する。臨床的には、閉鎖型の音刺激系と自作の鼓膜電極を用いた蝸電図検査法を確立した。この方法で得られる誘発電位は鼓室誘導法に比べて小さいが、再現性のある反応波形が得られることがわかった。本法は非侵襲的な蝸電図検査であるから、来年度予定している正常人ボランテイアに対する低周波バイアス法の人への応用が可能となるばかりでなく、臨床症例においても、両側耳の検査をルチーン化することにより患側耳と健常側とのバイアス効果の比較検討が可能となる等の点で意義がある。
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