研究概要 |
ヒト呼吸上皮細胞の分化過程における繊手新生、分泌物産生のシステムを明らかにするため、透過電顕及び走査電顕を用いて形態学的に解明した。すなわち、我々の開発た浮遊コラーゲンゲル培養法にてヒト呼吸上皮細胞の培養を行い、分化誘導を行い、経時的に分泌顆粒形成、および繊毛新生過程を観察した。その分化過程は、1.中心小体形成、2.中心小体の移動、3.基底小体形成、4.繊毛の伸長、の4段階に分けられ、中心小体形成において、中心小体の前駆体であるdeuterosomeが形成される前に、顆粒状構造物が出現することが明らかとなり、これまで分泌細胞と考えられていたれ細胞の中には、繊毛新生過程にあり顆粒状構造物を持つ未熟繊毛細胞が含まれることを明らかにした。このことは、呼吸上皮細胞の各分化過程における単クローン抗体作成時の、抗体スクリーニングにおいて問題となることが予想される。 また、成熟繊毛細胞の繊毛や微絨毛表面には糖衣が存在し、糖衣のシアル酸陰性荷電にて繊毛間を保ち繊毛の癒合を防いでいる。この糖衣形成を本培養系で観察した。すなわち、シアル酸に特異的に結合するレクチンである、MAA,SNAを用いて分化誘導後の細胞を経時的に観察したところ、繊毛出現前の分化前の状態では、シアル酸は存在せず、分化とともに、繊毛及び微絨毛の糖衣としてシアル酸が出現することが明らかとなつた。すなわち、繊毛細胞としての機能発現に糖衣中のシアル酸は重要であり、SNAおよびMAAは、分化の指標としても有用であることがわかつた。
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