以下の項目について研究を行った。 1.超微形態学的ならびに形態計測学的研究 繊毛新生過程は、(1)分泌顆粒形成、(2)中心小体形成、(3)中心小体の移動、(4)基底小体形成、(5)繊毛伸長の5段階に分けられた。呼吸上皮細胞の浮遊培養モデルにおいて、(1)は浮遊3日目にほぼすべての細胞で開始され、(2)は5日目にピークとなり、その後、(3)、(4)が進行し、7日目には(5)が開始され、14日目には成熟した繊毛となった。また、中心小体形成過程に出現するfibrous granule、deuterosome、centrioleを確認し、これらの出現頻度を明らかにし、浮遊3日目に、これらは上皮細胞の82%に出現した。即ち、繊毛新生は、まず分泌顆粒形成から開始されることが判明し、繊毛細胞は、ある種の分泌細胞由来であることが明らかとなった。 2.繊毛新生過程における表面微細構造と繊毛運動の発達 呼吸上皮細胞の浮遊培養モデルを用い、浮遊7日目以降の細胞について、表面微細構造と繊毛運動の対比を行った。繊毛運動は、繊毛打数、繊毛打振幅、繊毛間協調性について観察した。繊毛打数は、繊毛伸長早期より高い値を示し、繊毛打振幅、繊毛間協調性は、繊毛伸長と共に、増大、協調がみられた。また、同一細胞内での繊毛の協調はみられるが、繊毛細胞間での繊毛運動協調性、即ちmtachronal waveは認められなかった。 単クローン抗体の作成 浮遊培養3日目、即ち繊毛発現前の上皮細胞を用いて作成した。これらの単クローン抗体の中の一つは、浮遊3-5日目の細胞のみを認識し、浮遊前や成熟した繊毛細胞は認識しない。この抗体は上顎洞粘膜の杯細胞と分泌腺粘液細胞、扁桃上皮の中間層の細胞、空腸上皮のパネト細胞顆粒と吸収上皮ゴルジ野を染色し、分泌ならびに分化に関与する物質を認識すると考えられた。
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