以下の項目について研究を行った。 1.呼吸上皮細胞の分化誘導物質についての検索 呼吸上皮細胞のFloating Culture法にて繊毛細胞への分化を誘導し、分化が開始されると初期の細胞(Floating3日目の細胞)を用いて、モノクローナル抗体を作成した。スクリーニングは、免疫組織化学的に、Floating前や分化終了後の細胞には反応せず、分化初期にのみ反応する抗体を選択した。一つの抗体は、呼吸上皮細胞の分化初期段階に多い分泌細胞を特異的に認識し、Western blottingの結果では、過ヨウ素酸処理にて抗原性が失われることからある特定の糖鎖エピトープを認識することが示唆された。他の数種の抗体が得られているが、検索が進行中である。 2.繊毛細胞および分泌細胞の分化に及ぼすサイトカイン(IL1-β)の影響 呼吸上皮細胞の分化過程においてIL1-βがどのような作用を及ぼしているか検討した。Floating Culture中のmediumにIL1-βを混入させ、細胞を形態学的に観察した。その結果、IL1-βにて、繊毛細胞の分化過程すなわち繊毛新生が抑制され、繊毛新生が穏やかに進行すること、また、分泌細胞への分化は、急激に進行するがその後分泌細胞が残存し、分泌機能が維持されることが明らかになった。すなわち、IL1-βは、呼吸上皮細胞へも作用を及ぼして、繊毛細胞や分泌細胞への分化機構に調節的に作用していた。 3.Transforming growth factor-β(TGF-β)の呼吸上皮細胞分化における作用 Floating Culture法にて分化を誘導した呼吸上皮細胞の培養medium中のTGF-βをELISA法にて測定した。その結果、分化過程において特に特徴的な変化は見られなかった。
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