研究実績:我々の真珠腫に対する手術法は一期的手術が主体であり、術後の鼓膜・外耳道の欠損上皮の補填材料に、真珠腫上皮を使用し可能な限り欠損上皮が少ないように心がけて手術を施行している。その結果が集計され、術後3年以上が経過した症例の耳内所見・高分解能CTによる経過観察によって、、補填材料として使用した真珠腫上皮は術後、外耳道皮膚と同等の移送能を有し、外耳道・鼓膜の通常のmigrationを行うことが判明した。従って真珠腫上皮そのものにはmigrationの異常はないことが分かってきた。すなわち、真珠腫上皮であってもあくまでも患者が有する移送能を有する外耳道・鼓膜上皮そのものであり、これを外耳道・鼓膜と連続する上皮として残存させることにはなんら問題がなく、真珠腫の遺残・再発にはつながらないことが証明された。従って真珠腫の発生には真珠腫上皮そのものに問題があるのではなく、その下部組織、すなわち上皮下の細胞外マトリックス等に問題があるのか、耳管、あるいは耳管から乳突腔にいたる部分での閉鎖腔の治癒機転として、含気の粘膜への吸収が上皮の陥凹を引き起こし、真珠腫を形成することが推察された。 従って、いわゆるブロック形成がおこる部位の違いによって、耳管のブロックにおいては鼓膜の癒着から病態が発生し、緊張部型の真珠腫が発生し、上鼓室のブロックにおいては上鼓室の癒着・陥凹が発症し、上鼓室型の真珠腫が発生すると推察される。従って、これらを修復させる手術手技としては、これらのブロックを除去することを含めた、中耳含気腔を再建するとともに、鼓膜・外耳道皮膚を温存しつつ生理的位置に戻すことが重要であると考えられる。
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