我々は本研究の目的にしたがい、真珠腫の術式を一貫して一期的乳突腔充填型鼓室形成術として行ってきた。研究の最終年度の検討において、我々が行ってきた真珠腫初回手術例302例を対象として、これらを真珠腫上皮利用群と非利用群にわけて再発・遺残、術後の乾燥(上皮化)、術後の外耳道形態、術後の痂皮形成(移走能)、感染について比較検討した。全症例において真珠腫の再発は真珠腫上皮非利用群の1例のみに認められ、遺残を証明できた症例は一例もなかった。術後の乾燥は真珠腫上皮利用群で7.2日、非利用群で8.4日と利用群で短かった。これは上皮化を図る部分を最小にすれば乾燥が早いことを示しているものと考えられた。術後の痂皮形成は真珠腫上皮非利用群で有意に多かった。この結果は、再生上皮には移走能を持つ上皮が再生することが難しいことを示し、患者の有する外耳道、鼓膜上皮を利用することが重要であることを示唆している。以上の結果から、真珠腫上皮を利用した一期的乳突腔充填型鼓室形成術は理にかなった方法と考えられた。
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