Balb/cマウス骨髄由来肥満細胞の培養が再現性をもって可能となっている。20週以上長期の培養も継続されていて、さまざまな分化、成熟過程にある肥満細胞の入手が現在可能である。まずこれらの肥満細胞のヒスタミン含有量を測定し、分化成熟過程でその含有量が変動することを観察した。次には、この培養肥満細胞を走化させる物質の誘導、およびその同定をする実験を行った。まずマウスにスギ花粉を3回点鼻免疫してスギ花粉に対するIgE抗体産生を誘導した。さらにこのマウスの頸部リンパ節のリンパ球を培養し、IL-4などのサイトカインを産生するT細胞株の樹立に成功した。そしてその培養上清の肥満細胞に与える走化性をケモタキシスチャンバーを用い測定した。その結果、T細胞の培養上清に肥満細胞に対する走化性物質の存在を確認した。その物質の同定に関して現在調査中である。また、ほかの、いくつかの走化性を示す可能性を持つ物質について検討し、軽度の走化性を認めた。従って、肥満細胞にも走化性を認めるが、他の顆粒球ほど強いものではない。 現在、ヒトについても同様の実験系を確立することを試みている。まずヒトのリンパ球の培養を行い、リンパ球増殖の程度や、刺激の強さ、患者の個体差を検討している。さらにその培養上清中に含まれるサイトカインの活性の測定や、またヒトの臍帯血由来肥満細胞の培養系の確立を試みている。
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