様々な物質がマウス培養肥満細胞の走化性誘導因子として働くことが確認されたが、特にIgE抗体産生や肥満細胞増殖因子としてアレルギー性炎症を憎悪させるIL-4に注目した。まず免疫したマウスより採取したリンパ節細胞が抗原刺激で増殖し、さらにIL-4を産生することを確かめた。また今回化学伝達物質を放出して症状を起こす肥満細胞が、同時にIL-4産生を産生することが確認された。肥満細胞からの産生量はリンパ球の産生量より約10倍高く、さらに環境汚染物質の添加により増強した。肥満細胞の産生するIL-4の生理的な意義は十分には理解されていないが、環境汚染によるアレルギー性炎症の悪化に走化性誘導も関わることが推測された。 次にヒトにおいても肥満細胞の走化性誘導物質としてIL-4が関与する可能性を考え、まずヒト末梢血のリンパ球の培養を行いそのIL-4産生を検討した。スギ花粉症患者のリンパ球はスギ花粉とヒノキ花粉の刺激で強く増殖し、その際の培養上清にIL-4の放出を認めIF-γの産生は低下していた。さらに減感作療法を受けることによりこのリンパ球の増殖は抑制された。これらのことにより、ヒトにおいてもIL-4などの炎症性サイトカインによる走化性誘導がアレルギー性炎症の発症に関与していること、さらに減感作療法の機序として肥満細胞の走化性低下が考えられることなどが指示された。ヒトの肥満細胞株の樹立は、ヒト臍帯血から試みたが純度の高い細胞が再現性をもって得ることが出来ず、走化性の実験は行えなかった。
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