本研究は、動的体平衡機能を定量的に評価するための装置として、視覚入力刺激の方法とこれを追随させる重心移動表示法についての基本的アルゴリズムの検討と刺激装置を完成させることである。視刺激を与えるための表示装置はコンピュータのディスプレーであるが、ディスプレーを被検者の目の高さに固定するための装置を開発した。装置は、105cmから185cmまで自由に高さの調節固定が可能であり、小児から成人までの対応が可能である。 視刺激移動表示は、コンピュータ プログラムによって制御される。このためプログラムを開発した。視刺激のパターンは、左右方向移動刺激、前後方向移動刺激、時計方向回転刺激、反時計方向回転刺激、ランダム方向刺激について行うようにプログラムされた。刺激の表示法は、左右・前後方向の視刺激視標では赤色の縦幅15mm、横幅5mmの四角の視標を三角波形にて移動させる。移動幅は、14インチディスプレーにおいて15cmである。また、重心移動の追随表示は緑色の同型とし、視刺激表示の下に置き、両方の表示が見やすい位置とした。回転刺激は、直径10mmの円表示で、直径15cmの円を描かせる。重心移動の出力は、A/Dコンバータによって50mm/secサンプリングでコンピュータに入力され、同時にディスプレー上に表示される。視刺激移動速度と重心移動追随表示ゲインは自由に設定出来るようにプログラムされ、ほぼ記録可能なシステムとして完成した。このシステムによる検査法をBody Tracking Test (BTT)と名付けた。 今後、視刺激移動速度と重心移動追随表示ゲインについて最適な刺激適正値の設定が必要である。そのため、多くの正常被検者によって、それぞれの設定値を変えながら最適な刺激値を見いだすことを行う。また、年齢による正常範囲の検討も必要となる。正常者の決定が為されたなら、その後は、平衡障害についての評価、リハビリテーション効果についての評価なども行う必要がある。
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