研究概要 |
コルチ器において蓋膜と有毛細胞の間にずれの力が生じ,聴毛が屈曲する。そして、機械変換チャンネルが開いて有毛細胞が脱分極する。また、コルチ器の有毛細胞、支持細胞はgap junctionにより結合して代謝面においても電気生理学的にも機能する。そして、有毛細胞の興奮はコルチ器支持細胞にも伝わる。このように、他の細胞と同様にCa^<2+>がgap junctionへも作用して聴覚に関与していることが考えられる。本研究ではコルチ器支持細胞を分離し、ホールセルクランプ下に矩形波を用いて刺激した。試験用薬物は、ピペットに充満して拡散により細胞内投与した。平成5年はcapacitive currentを測定して、time constantを指標にコルチ器支持細胞間のギャップ結合の解離を観察した。しかし、time constantは膜抵抗および膜容量の積により規定され、本実験系のようにギャップジャンクションの解離を観察するのは困難であることがわかった。そこで、平成6年度は直接膜容量を測定した。コンピューター制御下にcapacitive currentよりクーロン量Qを求め次式より膜容量C_m,膜抵抗R_m C_m=(R^2_<in>)/(R^2_m) Q/(V_c)、R_S=(R_<in>τV_c)/(QR_m+τV_c) を求めた。Ryanodine10^<-6>M-10^<-9>M濃度において約50%の例でコルチ器支持細胞gap junctionの解離が観察された。Caffeine5×10^<-3>Mにおいてコルチ器支持細胞gap junctionの解離が観察されたがCaffeine0.5×10^<-3>Mにおいては認められなかった。よって、ryanodine,caffeineにより小胞体からCa^<2+>が放出されギャップジャンクションが解離したものと思われる。また、outward currentを測定するとcalcicum activated potasium curentが増加したことより、有毛細胞の興奮により増加したK^+の排出が加速されることが推測された。
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