Dry eyeをきたす代表的疾患であるSjogren症候群の動物モデルとしては、Sjogren症候群の自然発症マウスであるMRLマウスが有名である。今回、我々は自己免疫性涙腺炎の実験動物モデルとして、SJLマウスを用いて臓器特異的涙腺炎を作成し、涙腺浸潤リンパ球のsubsetについて検討した。実験動物にSJL/Jマウスを用い、涙腺抗原としてウシ涙腺から抽出、精製したLG-Ag-45Kをもちいた。涙腺抗原(100μg)をcomplete Freund adjuvantと混合し、マウスに免疫した。免疫後30日および40日後に眼窩外涙腺を摘出し、組織学的および以下の抗マウスTリンパ球抗体を用いて免疫組織化学的に浸潤Tリンパ球のsubsetについて検討した。抗体:(1)抗The-1(2)抗L3T4(3)抗Lyt-2。その結果、1)免疫30日後の涙腺に、導管周囲を中心に強い単核球の浸潤部位がみられた。一部の腺房中にも単核球の浸潤がみられ、腺房が破壊されている所見も観察された。浸潤細胞のみられない部位では、正常の腺房構造がたもたれていた。浸潤リンパ球の多くはThy-1陽性のT細胞で、L3T4陽性のヘルパーT細胞がLyt-2陽性のsuppressor/cytotoxicT細胞よりも多くみられた。2)免疫40日後の涙腺においても、30日の所見と同様に涙腺組織中に単核球を主体とする細胞浸潤を示す部位がみられた。 以上の実験結果から、結論として1)ウシ涙腺由来のLG-Ag抗原を用いたSJLマウスにおける涙腺炎は、自己免疫性涙腺炎の実験動物モデルとして有用と考えられた。2)その発症にはTリンパ球、特にhelperT細胞が重要と推測された。今後は、この実験系を用い発症に関与する免疫機構とその制御機構について、更に研究をすすめる予定である。
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