本研究では自己免疫性涙腺炎の実験動物モデルとして、SJLマウスを用いて臓器特異的涙腺炎を作成し、涙腺浸潤リンパ球のsubsetについて検討した。実験動物にSJL/Jマウスの6〜8週齢の雌を用い、涙腺抗原としてウシ涙腺から抽出、精製したLG-Ag-45Kをもちいた。涙腺抗原(100μg)をcomplete Freund adjuvantと1:1に混合し、マウスに免疫し、免疫後30日および40日後に眼窩外涙腺を摘出し、組織学的および以下の抗マウスTリンパ球抗体を用いて免疫組織化学的に浸潤Tリンパ球のsubsetについて検討した。抗体として抗Thy-1(p an T cell)、抗L3T4(helper T cell)および抗Lyt-2(suppressor/cytotoxic T cell)を用いた。その結果、免疫30日後の涙腺に、導管周囲を中心に強い単核球の浸潤部位がみられた。一部の腺房中にも単核球の浸潤がみられ、腺房が破壊されている所見も観察された。浸潤細胞のみられない部位では、正常の腺房構造がたもたれていた。浸潤リンパ球の多くはThy-1陽性とT細胞で、L3T4陽性のヘルパーT細胞がLyt-2陽性のsuppressor/cytotoxicT細胞よりも多くみられた。免疫40日後の涙腺においても、30日の所見と同様に涙腺組織中に単核球を主体とする細胞浸潤を示す部位がみられた。以上の結果より、ウシ涙腺由来のLG-Ag抗原を用いたSJLマウスにおける涙腺炎は、自己免疫性涙腺炎の実験動物モデルとして有用と考えられた。この発症にはTリンパ球、特にhelperT細胞が重要と推測された。今後、この動物モデルを用い自己免疫性涙腺炎の発症機序の解析と治療法の検討を行うことにより、ヒトのドライアイに対するより有効な治療法の開発が期待出来る。
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