研究概要 |
平成5年度の主目的は、網膜色素上皮細胞を移植された網膜組織がどの程度宿主側の細胞、即ち視細胞と機能的に関連し得るかを免疫組織学的手法を用いて評価することであった。そのために、白色家兎眼を当科設備の硝子体手術装置を用いて手術し、人工的に裂孔原性網膜剥離を作製し、網膜色素上皮細胞をシリコンブラシで除去した後に次の二群に分けた。第一群は、そのまま網膜を復位させ、第二群は、別の有色家兎眼から採取した網膜色素上皮細胞を網膜下の網膜色素上皮細胞除去部に移植した後に網膜を復位させた移植群とした。手術後一定期間をおいて、家兎の眼底を撮影した後、視細胞間物質(interphotoreceptor matrix,以下IPM)の局在をレクチンを用いて組織化学的に調べた。また、両群で走査型および透過型電子顕微鏡を用いて、操作部網膜の超微形態を調べた。その結果、移植した網膜としない網膜の両方でIPMの回復や網膜色素上皮細胞の再生が認められた。従って、操作部網膜で、ある程度の視機能回復が生じていると考えられる。その過程で、移植した網膜としない網膜の両方で、IPMの回復や網膜色素上皮の再生が認められことより、網膜色素上皮の再生能力は予想外に強いことが判明した。このことより、網膜色素上皮障害に起因する種々の疾患の治療には、網膜色素上皮の再生能力を促進するという新たな方法も考えられるに至った。これらの総合評価には、眼底撮影による所見の解析が非常に役に立った。さらに、異種間での移植の可能性を探るために、白色家兎眼に牛眼や人眼から採取した網膜色素上皮細胞を移植した。現在のところ、本実験系では、明らかな拒絶反応は認められていない。
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