まず光刺激呈示のためのソフトを作成し、光刺激呈示装置を既存の眼球運動測定装置と連絡することができた。刺激呈示は視野内の数箇所を選びランダムに行うようにでき、また刺激呈示の順序や眼球運動測定開始時点もある範囲内で自由に設定できるようになった。正常値設定のための正常人のデータは中枢性輻輳運動障害患者のデータと共に現在ほぼ分析できているが開散麻痺患者については途中である。現在の所、交通外傷後遺症としても多い輻輳不全患者の輻輳運動障害の状態と、訓練によるその改善パターンが明確になった。正常人では輻輳刺激が呈示されると衝動性眼球運動の混入はあっても僅かで、ほとんど純粋に輻輳運動のみで反応する。同じ刺激に対する輻輳不全患者の輻輳運動は、正常人とは異なり、大きな衝動性眼球運動が混入しているか、まず衝動性眼球運動のみで刺激に反応している。輻輳速度自体も正常人よりも遅い。これが視能訓練により輻輳運動速度は早くなったが大きな衝動性眼球運動が混入すること自体は変わらなかった。脳幹部に存在する輻輳運動に関与する神経細胞には純粋の輻輳運動を行わせる神経細胞と、衝動性眼球運動と関連して輻輳運動を行わせる神経細胞があるとの説がある。輻輳不全患者は相対的に前者の神経細胞の機能低下によるものであり、視能訓練は後者の神経細胞の機能亢進を図ることにより輻輳運動の改善をみたのではないかと推測させるデータであった。この新知見は平成6年6月国際神経眼科学会で発表の予定である。
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