我々が、過去にin vivoで報告した角膜上皮の細胞骨格蛋白fodrinの創傷治癒過程における分布変化をin vitroにおいて再現し、さらに培養細胞を用いてfodrinの分布変化の機構を検討した。牛眼の角膜上皮初代培養細胞を使って以下の結果を得た。 confluentな状態になり細胞間の結合装置も完成した状態の角膜上皮初代培養細胞において、一部にabrationを行うとその周囲数層の細胞で受傷10分後にはfodrinの分布変化を認めた。すなわち受傷10分後には細胞膜裏打ち蛋白であるfodirnが細胞壁より離れて細胞質中にび慢性に分布するようになった。また、細胞内のプロテインキナーゼCを活性化するphorbol esterを培養液中に添加すると10分後にはやはりfodrinは分布変化をおこす。一方、細胞内カルシウム濃度を上昇させるカルシウムイオノフォアを添加した場合は分布変化が起こらなかった。 以上の結果より、in vivoにおいて創傷治癒過程でおこる細胞骨格蛋白の分布変化がin vitroにおいても起こること、またその変化は細胞内カルシウムの上昇を介したものではなく、細胞内プロテインキナーゼCの活性化によって起こる可能性が示唆された。 今後、細胞骨格蛋白の分布変化が細胞間及び細胞基質間の接着にどのように影響しているのか検討を進める。また、網膜の機能を保つために重要な役割を果たしている網膜色素上皮細胞等においても同様の変化が起こるか検索していく。
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