研究概要 |
カルシウム動員系,アデニレートシクラーゼ-cAMP系,細胞骨格(微小管,微細線維)系が,網膜色素上皮細胞の貪食能におよぼす影響を検討した。 家鶏胚の初代培養網膜色素上皮細胞を用い,1.09μmのラテックス粒子の細胞内への取り込みを貪職能とした。カルシウム動員はA23187処理で,アデニレートシクラーゼ-cAMP系はdibutyryl cAMP処理で,網膜色素上皮細胞の貪食能の変化を調べた。また,培養細胞の微小管はコルヒチンで微細線維はサイトカラシンEで脱重合することを蛍光抗体法で確認した後に,コルヒチン,サイトカラシンEで処理した網膜色素上皮細胞の貪食能の変化を調べた。 培養網膜色素上皮細胞の貪食能は,ラテックス粒子添加後6時間から上昇し始め,48時間以降緩やかになった。A23187処理では有意な貪食能への影響はみられなかった。dibutyryl cAMP処理では,10^<-4>,10^<13>Mで有意差を認めた。10^<-6>-10^<-4>MのサイトカラシンE,10^<-6>,10^<-5>Mのコルヒチンの前処置は網膜色素上皮細胞の貪食能を有意に低下させた。 培養網膜色素上皮細胞においてアデニレートシクラーゼ-cAMP系と細胞骨格系は,貪食能に有意な影響を及ぼすと考えられる。しかし,貪食作用には認知,取り込み,細胞内移動などの課程があり,アドニレートシクラーゼ-cAMP系,細胞骨格系がどのような機序で貪食能に影響を与えたかは不明である。網膜色素上皮細胞は,生理的に視細胞外節を貪食しているが,これまで,微小管や微細線維が取り込みや細胞内移動に関与している可能性が報告されているが,今後,情報伝達系と細胞骨格系との関係を調べていきたい。
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