研究概要 |
1.実験的視細胞変性網膜、および遺伝性視細胞変性網膜における複合糖質異常の解析:Gal β1,3(4)GlcNAcα2,3-sialyltransferase、およびGalβ1,3 GalNAcα2,3-sialyltransferase の cDNA を、それぞれに特異的なプライマーを用いてPCRで分離し、プラスミッドのBluescript SK に組み込んで、digoxigenin 標識 cRNA プローブを合成した。これらのプローブを用いて、正常および視細胞変性網膜の mRAN 発現分布についてin situ hybridization 組織化学的に検索した。O-グリコシド結合型複合糖質糖鎖末端にシアル酸を付加する Galβ1,3 GalNAcα2,3-sialyltransferase の mRNA は、正常ラット網膜視細胞においては、生後16日目から18日目にかけて強い発現が観察された後、その発現量は減少し、成熟網膜ではほとんどわずかしか検出できなかった。シアル酸α2,3- Galを認識するレクチンのラット視細胞の染色像は、生後16日目から以降ずっと検出された。以上の結果から、シアル酸を含有するO-グリコシド結合型複合糖質は、生後早期に合成された後、ほとんどturn overされることなく、視細胞層における構造維持に重要な役割を果たしていることが推定された。 2.遺伝子ターゲッティング法を用いた解析:ラットのα2,6-sialyltransferase の cDNA の Bam H1-Bgl II 断片をプローブとして用い、マウスのゲノムライブラリーから、マウスのα2,6-sialyltransferase のゲノム DNA クローンを2個分離した。それらのサブクローニングを行い、塩基配列を決定した。 3.ヒト網膜色素変性症患者における複合糖質異常の解析:網膜色素変性症患者の末梢血 DNAを検索試料として、α2,6-sialyltransferase の酵素触媒領域をコードするexon 6の翻訳領域の突然変異の有無について、PCR-heteroduplex法を用いて解析した。1995年 2月までに検索した患者においては、変異は検出されなかった。
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