日本人に多発する難治性ぶどう膜炎の分子免疫学的研究

1994 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 05671472
• 研究機関: 横浜市立大学
• 研究代表者: 大野 重昭 横浜市立大学, 医学部, 教授 (50002382)
• 研究分担者: 内尾 英一 横浜市立大学, 医学部, 助手 (70232840) ; 熊谷 直樹 横浜市立大学, 医学部, 講師 (20234510) ; 中村 聡 横浜市立大学, 医学部, 助手 (00237398) ; 磯部 裕 横浜市立大学, 医学部, 助教授 (30193402)
• キーワード: 難治性ぶどう膜炎 / 原田病 / サルコイドーシス / 分子遺伝学 / 分子免疫学 / 実験的自己免疫性網膜ぶどう膜炎 / HLA / ベーチェット病

研究概要

日本人に多発する難治性ぶどう膜炎の分子遺伝学的検索をおこなったところ、ベーチェット病はHLA-B*5101と強い相関を有することが世界ではじめて見出だされた。従って本病の発症にはHLA抗原の63番目アスパラギン、67番目フエニルアラニンが直接関与している可能性が考えられた。これに対し、原田病ではHLA-DRB1*0405および0410、そしてHLA-DQB1*0401および0402との強い相関が見出され、原田病ではDR分子第三可変領域57番目のセリン、およびDQ分子70番目のグルタミン酸、71番目のアスパラギン酸が疾患発症に重要な役割を果たしていることが明らかにされた。同様の検索をサルコイドーシスについておこなったところ、HLA-DR5、-DR6、-DR8および-DR52が有意の増加を示していた。これらの事実から、サルコイドーシスの発症にはHLA-DRB1分子の11番目アミノ酸残基であるセリンがその疾患感受性を規定していることが示された。
つぎにヒトの難治性ぶどう膜炎モデルであるマウス実験的自己免疫性網膜ぶどう膜炎(EAU)において、腫瘍壊死因子(TNF-alpha)の関与を検討した。その結果、EAU感受性マウスのTNF-alpha産生能は抵抗性マウスにくらべ有意に上昇していた。また、免疫に際しヒトリコンビナントTNFを投与したところ、EAUは重症化し、発症率も上昇した。
以上より、日本人に多発する難治性ぶどう膜炎の発症には、分子遺伝学的発症機構が深く関与し、さらにTNF-alphaなどのサイトカインシステムが重要な役割を果していることが明らかにされた。

研究成果

• [文献書誌] Yokota K.,Hayashi S.,Kotake S.,Ohno S.etal.: "Antibody response to oral Streptococci in Behcet's disease." Microbiol.Immunol.36. 815-822 (1992)
• [文献書誌] Mizuki N.,Inoko H.,Kashiwase K.,Ohno S.etal.: "Behcet's disease associated with one of the HLA-B51 subantigens, HLA-B^*5101." Am J Ophthalmol. 116. 406-409 (1993)
• [文献書誌] Yamakawa Y.,Sugita Y.Takahashi Y.,Ohno S.etal.: "Gene expression of tumor necrosis factor-alpha(TNF-alpha) and heat-shock protein(HSP) 70 in patients with Behcet's disease." Arch Dermatol Res.285. 505-508 (1993)
• [文献書誌] Ishii N.,Isogai E.Yamakawa Y.,Ohno S.etal..: "Demonstration of antigen-specific immune response against Streptococcus sanguis." J Dermatol Sci.5. 182-189 (1993)
• [文献書誌] 大野重昭: "HLAとぶどう膜炎" 日本の眼科(臨時増刊). 63. 15-17 (1992)
• [文献書誌] 木島正哉、大野重昭: "副賢皮質ステロイド剤の基礎と臨床" 眼科. 35. 755-763 (1993)
• [文献書誌] 杉田美由紀、中村聡,大野重昭、他: "横浜市大眼科におけるぶどう膜炎の疫学的研究" 臨床眼科. 47. 1249-1252 (1993)
• [文献書誌] 沖坂重邦、大野重昭: "謬原病と類縁疾患(3)" Medical Practice. 10. 1619-1627 (1993)
• [文献書誌] 松本覚、大野重昭: "ベーチェット病の疫学" 日本医事新報. 3622. 134-135 (1993)
• [文献書誌] 新藤裕美子、大野重昭: "Behcet病と原田病の眼病変" Practitioners. 2. 993-996 (1993)
• [文献書誌] 山川有子、杉田泰之、高橋泰英、大野重昭、他: "ベーチェット病患者におけるTNF-alpha産生能について" 横浜医学. 44. 215-221 (1993)
• [文献書誌] 大野重昭、水木信久: "Behcet病の分子遺伝学" 医学のあゆみ. 164. 52-56 (1993)
• [文献書誌] 新藤裕美子、大野重昭: "ぶどう膜炎の診断と治療" 総合臨床. 42. 2569-2570 (1993)
• [文献書誌] 新藤裕美子、大野重昭: "自己免疫疾患の眼病変とその治療" 臨床医. 20. 69-71 (1994)
• [文献書誌] 水木信久、大野重昭: "Behcet病の免疫遺伝学的解析" 医学のあゆみ. 168. 723-725 (1994)
• [文献書誌] Nishio M.,Isobe Y.,Hatano H.,Ohno S.etal.: "The genetic effect of engineered vaccine on Pseudomomonas aeruginosa infection in mice." Immunogenetics. 38. 280-282 (1994)
• [文献書誌] 大野重昭: "成人T細胞白血病ウイルスと眼疾患" 日本眼科学会誌. 97. 663-664 (1993)
• [文献書誌] 石原麻美、大野重昭、石田敬子、鍵谷雅彦、他: "サルコイドーシスにおける疾患感受性因子の検討" 日本眼科学会雑誌. 98. 80-85 (1994)
• [文献書誌] Mizuki N.,Ohno S.: "Rrcent Advances in Uveitis" Kugler Publications, 6 (1993)
• [文献書誌] nakamura S.,Sugita M.Tanaka S.,Ohno S.,: "Recent Advances in Uveitis" Kugler Publications, 4 (1993)
• [文献書誌] Sugita M.,Enomoto Y.Ohno S.etal.: "Rrcent Advances in Uveitis" Kugler Publications, 3 (1993)
• [文献書誌] Watanabe N.,Ishioka M.Ohno S.etal.: "Recent Advances in Uveitis" Kugler Publications, 4 (1993)
• [文献書誌] MIzuki N.,Nakamura S.Ando H.,Ohno S.etal.: "Behcet's disease" Elsevier Science Publishers BV, 4 (1993)
• [文献書誌] Isogai E.,Yokota K.Fujii N.,Ohno.etal.: "Behcet's disease" Elsevier Science Publishers BV, 10 (1993)
• [文献書誌] 新藤裕美子、大野重昭: "眼病変を読む -全身疾患と眼-" 診断と治療社, 4 (1993)
• [文献書誌] 大野重昭: "今日の治療指針" 医学書院, 1 (1993)
• [文献書誌] 大野重昭、新藤裕美子: "眼科学大系(4)" 中山書店, 4 (1994)
• [文献書誌] 大野重昭、新藤裕美子: "眼科学大系(4)" 中山書店, 8 (1994)
• [文献書誌] 大野重昭: "マスト細胞とアレルギー" 医科学出版社, 4 (1993)