ジスルフィド化合物である^<14>C-cystineを培養液に加え水晶体を培養した後、水可溶性タンパク質(WSP)と水不溶性タンパク質(WISP)に分画するとWSPに多く取り込まれた。正常ウイスター系ラットの4、8、16、70週齢と加齢経過で^<14>C-cystineの取り込みをみた結果、加齢にともない上昇した。伴性劣性遺伝で約10週齢ころから肉眼的に両眼に自然発症白内障をきたすIhara Cataract rat f-strain(ICR-f)を使用して同様の実験を行なった結果、水晶体タンパク質に変化のみられる8週齢からWistarに比較して取り込み増加が認められ加齢とともに増加した。これらのことより、水晶体タンパク質構成ポリペプチド鎖のスルフォヒドリル基(SH基)が酸化露出されS-S基となり結合することが示唆された。このことを明らかにするため、NADH、NADPH、dithiothreitol(DTT)を培養液に加え^<14>C-cystineの取り込みをみた結果、DTTを加えた群ではWISPへの取り込みが抑制されたがNADH、NADPH群は変わらなかった。SH基の酸化剤であるdiamideを加え同様の実験を行ったところ、diamide添加群ではWISPへの^<14>C-cystineの取り込みが減少しSH基の酸化によることが考えられた。^<14>C-cystineを取り込ませた水晶体をWSPとWISPに分画したのち、還元型グルタチオン(GSH)、DTT、2-mercaptoethanolを加えincubationすると結合していた^<14>C-cystineが遊離した。白内障水晶体では一般的にGSHが酸化されS-S基を形成すると考えられた。GSHの前駆体であるgamma-glutamyl cysteinyl ester(gamma-GCE)の影響をみた結果、培養液に同時投与では取り込み抑制がみられたが、前投与では影響されなかった。これまでの実験結果から、^<14>C-cystineの取り込みはS-S基への結合が考えられた。
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