1.移植に適さない提供眼球5眼を用いて、どの眼組織がHLAのDNAマッチングの材料として適しているか検討した。その結果、水晶体と硝子体を除く結膜、角膜、眼筋、虹彩、脈絡膜、網膜、視神経の各組織から、DNAを抽出してPCR法により増幅することに成功した。ただし、虹彩と脈絡膜は抽出したDNAにメラミンに由来すると思われる色素が混入しており、そのためか抽出液を50-100倍に希釈して初めて増幅を行い得た。この結果より、通常アイバンクより送られる強角膜片のうち、移植に用いない周辺部角膜を材料としてタイピングが行い得る事が確認された。 2.実際に移植に使用した角膜片の周辺部(ドナー)と取り除いたレシピエント角膜の一部を冷凍保存したものを材料に、HLAクラスIIのタイピングを行った。これまで解析を行ったのは23眼で、うち5眼で臨床的に拒絶反応を生じていた。HLA‐DP、DQ抗原は全例で解析可能であった。DP抗原ではマッチング数0であった15眼のうち4眼で拒絶反応を生じており、マッチング数1もしくは2の6症例中拒絶反応を起こしたのは1例のみであった。DQ抗原ではマッチング数0の17例中5例で拒絶反応を生じており、マッチング数1もしくは2で拒絶反応を生じた例はなかった。 これらのことより、眼組織を材料としてHLAのDNAマッチングが全例で行いえること、およびマッチングの程度が角膜移植の成績に影響を及ぼす可能性があることが示された。今後HLA‐DR抗原の解析を行うと共に、さらに症例数を増やして検討を行う予定である。
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