研究概要 |
平成6年度は、それまでに確立した方法に基づいて角膜組織でのHLAクラスIIタイピングを実際に移植を行った症例について行った。材料としては、ドナーは搬送された強角膜片のうち、角膜移植に使用した中央部を除いた周辺角膜および強膜の一部を用い、レシピエントは、手術のために除去した中央部角膜の一部を用いた。これらのサンプルよりDNAを抽出した後、RFLP-PCR法によりタイピングを行った。 これまでに全体で54例の臨床サンプルをドナー、レシピエント双方について調べた。そのうち29例は以前に移植を行った症例があるか、角膜内に2象限以上にわたって血管新生のある、いわゆる拒絶反応のハイリスクの症例で、残りの25例はこうしたリスクを持たない非ハイリスクの症例であった。その結果、非ハイリスクの症例では、解析を行ったDRB1,DQB1,DPB1の各抗原のマッチングの程度と拒絶反応の発症頻度の間に有意の相関を認めなかった。一方、ハイリスクの症例では、DRB1,DQB1抗原では相関を認めなかったものの、DQB1抗原では拒絶反応発症との関連を認めた。すなわち、DQB1抗原のマッチングが全くない19例のうち、11例(57.9%)で拒絶反応が発症したが、マッチングが1または2抗原あった10例では1例(10%)に発症したのみであった(カイ2乗検定、P<0.05)。また、本年度において初めてHLAクラスI抗原のHLA-A抗原の解析をドナー、レシピエントあわせて45例に行った。症例数が少ないため拒絶反応との関連は明らかにはできなかったが、今後例数を増やして解析することによって新たな知見が得られる可能性が示された。
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