研究概要 |
アレルギー性結膜炎,ドライアイなどオクラーサーフェスの慢性炎症性疾患の病態を解明する目的で結膜局所に浸潤している炎症細胞の定量的解析およびPCR法を用いたサイトカイン発現の検索を行なった。 1.炎症細胞の定量的解析 ブラッシュサイトロジーにより結膜上皮内の細胞を採取し,採取された細胞300個あたりの炎症細胞の比率を比較した。アレルギー性結膜炎およびドライアイにおいて結膜炎の重症度に伴い結膜上皮内の好中球の比率が高くなる傾向がみられた。アレルギー性結膜炎では,瞼結膜上皮内に好酸球0.4±1.8%,肥満細胞0.03±0.16%,好中球1.6±3.4%,リンパ球1.7±4.6%をみとめた,好酸球および肥満細胞の平均出現頻度は低く,定量的評価には適していないため、出現頻度が高く、結膜炎の重症度に伴い変化する好中球を用いて,また,スギ花粉症に対し,抗アレルギー点眼薬(フマル酸ケトチフェン)を花粉飛散期2週間前から開始した群では,花粉飛散期に投与を開始した群に比べ結膜上皮内の好中球の出現頻度が低く,これは臨床症状のスコアによく一致し,スギ花粉症に対し抗アレルギー点眼薬の季節前予防的投与の有効性を示した。 2.PCR法を用いたサイトカイン発現の検索 眼局所における炎症細胞浸潤のメカニズムを解明する目的でブラッシュサイトロジーにより結膜から採取した細胞に対してRT‐PCR法を用いてサイトカインの発現を検討した。重症のドライアイを呈するシェーグレン症候群では、結膜上皮内にインターロイキン2のmRNAの発現がシェーグレン症候群以外のドライアイに比べ高率にみとめられた。また、インターロイキン6のmRNAはシェーグレン症候群にのみ認められた。正常コントロールではいずれの発現もみとめられず、シェーグレン症候群の結膜上皮では炎症性サイトカインの発現の上昇が確認され、唾液線や涙腺と同様な炎症のプロセスが結膜局所にも存在する可能性が示唆された。
|