研究概要 |
平成6年度は小腸粘膜上皮粘液層(PMG)が粘液溶解剤N-acetyl cystein(NAC)並びに粘液産生抑制剤colchicine(Co)の投与によりいかなる影響を受けるのかを腸管透過性を指標として検討した。方法として6週令の雄性ラット28匹を以下の4群に分けた。C群:腹腔内内に生食投与3時間後に、胃瘻より十二指腸に挿入したチューブよりfluorescein isothiocyanate dextran 70,000(FD)を750mg/kg注入。Co群:腹腔内に生食に溶解したCo10mg/kg投与3時間後に、FD750mg/kgを十二指腸に注入。NAC群:腹腔内に生食投与3時間後にFD750mg/kg及びNAC3000mg/kgを十二指腸に注入。Co+NAC群:腹腔内に生食に溶解したCo10mg/kgを投与3時間後にFD750mg/kg及びNAC3000mg/kgを十二指腸に注入。各群とも30分後に門脈血を採取し、血漿FD濃度を蛍光分光法にて分析した。結果は血漿FD濃度(μg/ml)はC群:3.34±0、52,Co群:3.99±0.76,NAC群:7.95±1.04,Co+NAC群:33.9±21.0であり、NAC群、Co+NAC群はそれぞれC群、Co群より高値(p<0.01)を示し、またCo+NAC群はNAC群より高値(p<0.05)を示した。即ち粘液産生抑制剤Coの腹腔内単独投与のみではFDの腸管透過性の亢進は見られず、一方、粘液溶解剤NACの小腸管腔内投与により、FDの腸管透過性の亢進が認められ、CoとNACとの併用でさらなる亢進がみられた。これらより粘液の可溶化により、腸管透過性の亢進が惹起され、また、既に形成されている粘液層だけでなく、反応性の粘液産生の存在が腸管透過性に関与する因子である可能性が示された。
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