研究概要 |
胎児手術のバックアップシステムや胎児研究のモデルとしての可能性を有する胎児ECMOの開発を目的として、山羊胎児水中保育実験を行った。在胎120日(満期150日)に母体(竹前ヤギ、購入)を全麻下帝王切開で、娩出したヤギ胎児を対象とした。胎児は娩出後、直ちに臍帯動静脈よりカテーテル(クラレ、現有)を挿入し、体外循環回路(クラレ、購入)に接続した。膜型人工肺は新生児ECMO用(クラレ、購入)を使用した。潅流は、A-Vシャントとし、胎児は人工羊水を満たした恒温水槽で水中保育した。胎児モニターとして、頚動静脈カニューレ(購入)による動静脈圧、血液ガス、血算、血糖、ACTなどを測定した(消耗品費)。さらに水中保育胎児に対して、現有のカラードップラー装置(東芝、現有)を使って、卵円孔、上行大動脈、PDA、下行大動脈などの血流量をそれぞれ定量した。実験例4例の潅流時間は3-70時間(平均40時間)であった。潅流中の胎児の血行動態をDoppler超音波検査で観察したところ、潅流時間が70時間の長期生存症例では動脈管の狭窄や閉塞は認められず、拡張末期に左-右シャントを伴う右-左シャントの波形を示した。しかし、ECMO開始後3時間で死亡した症例では開始直後より動脈管は閉塞しており、43時間目と44、5時間目に死亡した2症例では動脈管は狭窄し、血流波形は閉塞パターンを示した。動脈管胎児循環は長期生存の最も重要な因子であると考えられる事から、2頭にPGE1を0,1ug/kg/minで、動脈管の狭窄時に短時間使用し、1頭にはECMO開始時より持続的に投与した。PGE1を投与しなかった4頭は、動脈管が閉塞し死亡したのに対して、PGE1間欠投与で動脈管の狭窄時に開大がみられ、持続的なPGE1の投与により、動脈管は開存し92時間の長期潅流が可能となった。この結果、胎児循環維持におけるPGE1の有用性が示唆された。
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