研究概要 |
胎児由来の電気信号を検出するために、母親の腹壁からの生体電気信号を高性能増幅器とシグナルプロセッサーを用いて記録した。これより得られた電気信号は母親および胎児由来の心電図、筋電図および雑音を含む。そこで、まず筋電図および雑音を減らすために、電極接着部位の抵抗の減らし方および筋電図の混入の少ない誘導を研究した。その結果(1)Ag/AgCl電極およびケラチンクリームを用いて皮膚表面の雑音を減らす。(2)電気的レファレンスのとり方を双極誘導、単極誘導(フランク誘導における便宜的なゼロの設定)そして独自に考案した単極誘導の3通りを比較した。考案したレファレンスは両下肢(最も母親の心臓から離れている)における単極誘導の不関電極の差を電気的ゼロとしたものです。結果は電気的な安定性を加味すると、双極誘導が優れていた。(3)X,Y,Z誘導およびその変形誘導の中では母体の脊柱と腸骨上窩間の双極誘導が最も母体の筋電図を軽減できることを明らかにした。次いで、生体アンプのフィルターの選択を胎児起電力が最も大きくかつ雑音の少ないものという観点から検討した。すなはち、低周波帯域フィルターを0.5,1.0,2.0,3.0Hzおよび20Hzで検討し、2.0Hzが最も胎動や呼吸によるドリフトが少ないことが判明した。高周波帯域フィルターは30,60,100Hzおよび200Hzで検討した。その結果、30Hzが胎児心電図の電位をそこなわず、雑音を減弱させるのに最も適していた。今後も、前年度に引き続き、高感度胎児心電計の製作にかかり、得られた胎児心電図の問題点を検討し、さらに、機能の改善をはかる。
|