研究概要 |
抗原の種類による免疫応答性の違いを検索する目的で、ラット歯肉にLPSをはじめとする数種類の異なった抗原を接種すると、抗原の種類によって抗体産生応答性(抗体産生細胞数、免疫グロブリンのクラス、サブクラス等)、主要な免疫応答の場(脾臓、リンパ節)等が異なることを、前年度報告した。我々はこれら異なった免疫応答性を調節している重要なファクターはヘルパーT細胞(Th)ではないかと考え、さらに抗原特異的なThについての検索を行ってきた。 我々は今年度、抗原特異的なThをクローニングした。そして、それらクローニングのサイトカイン産生能(IL-2、IFN等)、細胞性免疫誘導能、B細胞調節能、マイトゲン応答性等を検討し、それらの性質を報告した。また、これらThクローンにサイトカイン(IL-4、IFN等)を作用させ、増殖能、サイトカイン産生能等を検討した。(九州歯科学会総会〔第54回,北九州,1994年6月11日.安西ら〕、歯科基礎医学会総会〔第36回,大阪,1994年10月17日.安西ら〕)。その結果、OVAではTh1タイプのクローン(IFN、IL-2産生、DTH誘導等)がLPSではTh2タイプのクローン(IL-2非産生、抗体産生能誘導、DTH非誘導等)が誘導されることを示した。 また、これらThサブセットの解離は抗原の種類の違いにより生じたものであることを示唆し、異なったThサブセットが誘導されるために上述の異なった免疫応答性が誘導されたものと推察した。(現在、雑誌に投稿準備中)。 ラットのクローンThの報告は少なく、その性質はマウスとは若干異なり、また研究者間でも相違が認めれる。特にLPS特異的なThのクローニングはほとんど見受けられないため、今後これらのクローンを用いて他の実験への応用も考慮中である。
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