研究概要 |
老化促進モデルマウス(senescence accelerated mouse:SAM)の歯周組織の研究の一環として、臼歯部歯根膜の加齢変化を検索した。SAMは通常状態で固形飼料で飼育されている。 老化の兆候が緩やかに出現するSAMR1/Iwを対照群として、老化の兆候が急速に出現するSAMP2/Iwを実験群として用いた。2系統のマウスを各々2、6、12、16カ月齢(各5匹)で屠殺し、顎骨を通常の組織標本とした。上顎臼歯部の連続切片を作製して、光顕、画像解析、一部は電顕的に検索した。上顎の第1臼歯(M1)の近心歯根膜で歯根膜幅、単位面積あたりの線維芽細胞数を数え、セメント粒の数、マラッセの上皮遺残の数は近心と遠心の2根の全週を数え、それぞれ統計処理し、月齢による差と系統間の差について比較検討した。歯根膜幅は2系統で2ヵ月齢で60mumであるが、16ヵ月齢で45mumとなり、加齢と共に歯根膜幅が狭くなった。線維芽細胞数は種々の月齢間でも、2系統間でも差はみられなかった。セメント粒は根部に多くみられ、2系統とも2ヵ月齢ではみられなかったが、加齢と共に増加し、16ヵ月齢群には多発した。マラッセの上皮遺残は根分岐部の他、歯頸部にもみられ、加齢と共に消失した(2ヵ月齢で4個,16ヵ月齢で1ないし2個)。 ヒト歯根膜の加齢変化でいわれているような線維の硝子化、歯根膜幅の減少、セメント粒の増加およびマラッセの上皮遺残の消失がSAMにもみられた。線維芽細胞の数はSAMでは変化はなく、また動脈硬化もみられなかった。また、種々の組織所見についてSAMR1/IwとSAMP2/Iwの間に大きな差はみられなかった。
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