研究概要 |
本年度は、以下の実験で唾液分泌の制御機構を解析した。 1.唾液分泌におよぼすオカダ酸とカリクリンAの効果 オカダ酸とカリクリンAはフォスファターゼ阻害剤である。本薬剤をラット耳下腺スライスとともに培養したところ、オカダ酸ではわずか15分、カリクリンAでも60分で細胞間接着装置であるtight junction,adherens junction,desmosomeなどが著しく変形することをみいだした。また、開口分泌像が多数みられたが、その一部は、本来生ずることのない側方形質膜で生じたように思われた。^<32>Pを用いたリン酸化実験では、オカダ酸、カリクリンA処理後に50KD付近のたんぱくのリン酸化が認められた。一方、リン酸化を介して分泌を促進するといわれるイソプロテレノール投与では、細胞間接着装置の変形はなく、開口分泌も管腔形質膜のみで生じ、リン酸化されたたんぱくは20KD付近であった。以上から、たんぱくのリン酸化-脱リン酸化反応のバランスが正しく行われることが、細胞の形態維持や分泌機能の発現に必須であると考えられた。 2.IP3およびカルシウムによる水分泌の調節 リアルタイム共焦点レーザー顕微鏡でカルシウムのイメージングをおこなった。その結果線条部導管の一部の細胞が発火し、ついでそれが周囲の細胞に拡大するという知見を得た。線条部導管は原唾液のイオンを再吸収する部位であり、現在、IP3レセプターの局在を確認して、機能との関係を調査している。なお腺房細胞におけるIP3レセプターの局在は証明できず、小脳タイプ(タイプI)とは別種のレセプターを考えている。 以上の実験を遂行するにあたり、予定通り消耗品費を中心に予算を消化した。
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