研究概要 |
我々は、Entamoeba gingivalis(歯肉アメーバ)を特異的に検出するために、small subunit of ribosomal RNA(SrRNA)の塩基配列に基づく特異DNAプローブの開発を試みた。まずEntamoeba histolytica(赤痢アメーバ)を含む17種の真核生物と7種の原核生物のSrRNA遺伝子DNAの塩基配列をアライメントし、原生生物において高度に保存されている配列を両末端に近い領域から選び、おのおの17塩基からなる一対のプライマーを作成した。次にE.gingivalisの標準株ATCC30927株の培養液(4種の共存細菌を含んでいる)から抽出・精製したDNAをtemplateにして、先のプライマーを使ってPCRを行い、増幅断片を得た。その断片をpUC18にクローニングして4クローンを選び、挿入断片の塩基配列を決定した。長さは1918-1921bpで、いずれもA-T rich(65.5%)であった。決定された配列と他の9種の原生生物の配列とをアライメントし、E.gingivalisに特異的と考えられる領域を選び、28塩基からなるDNAプローブ(PEG1)を合成して3'末端をジゴキシゲニンで標識した。次に、このプローブの特異性をsouthern blot hybridization法およびin situ hybridization法によってE.gingivalis 2株ならびに同じEntamoeba属の原虫6株、口腔Trichomonasl株、Candida albicans株を対象にして調べた。その結果プローブはE.gingivalisの2株とのみ反応し、他の株とは全く反応しなかった。すなわちPEG1プローブはE.gingivalisに特異的であることが解った。最後に、E.gingivalis と9種の原虫のSrRNAの塩基配列において比較的よく保存されている1,163座位を選び、NJ法によって系統樹を作成した。その結果、E.gingivalisは調べた範囲内ではE.histolyticaに最も近いことが証明された。
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