骨組織の石灰化現象と関連して非コラゲン性タンパク質が注目されている。今回は新生児ラット頭蓋骨のミネラルコンパートメントから主として3種類の非コラゲン性タンパク質を抽出し、各々がオステオポンチン、BSP、α_2HSglycoproteinのanalogueであることを明らかにした。オステオポンチンに関しては、C末端部分(N端から286-301段目)のペプチドと中央部分(N端から143-163段目)のペプチドを合成し、抗原とした。骨組織に特異的であるとされているBSPのN末端(N端1-15段目)ペプチドも抗原として用い、それぞれの抗体を作製した。また、血清由来とされているα_2HSglycoproteinのN末端(N端1-13段目)ペプチドに対する抗体の作製を行った。 抗血清はラット頭蓋骨から抽出したそれぞれのタンパクと反応し、抗体の形成が確認された。前年度は特にオステオポンチンについて光学顕微鏡的に観察を行い、新生児ラット頭蓋骨の初期石灰化部位では顆粒状の免疫反応が石灰化した骨基質中に認められた。骨の改造現象が認められる部位では、いわゆるcement lineに強い免疫活性が認められ、そこに添加される骨基質中にも顆粒状の反応産物が観察されたことを報告した。今年度は電顕的にimmunogold-silver法を用い、超微構造的局在を検討した。初期石灰化部位で認められた顆粒状の反応産物はいわゆるelectron dense patchと呼ばれる構造物と良く一致していた。周囲のコラゲン線維には反応産物は認められなかった。扁平な骨芽細胞に接するLamina limitansや破骨細胞から続くcement lineには強い反応が認められたが、ruffled borderに面した骨基質には反応は明瞭ではなかった。今回の実験系で骨芽細胞や骨細胞による分泌を直接示唆するような所見は得られなかったが、初期石灰化過程でミネラルと深く関与していることが示唆された。さらにこのタンパクと破骨細胞の関わりも示唆されたと考える。
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