研究概要 |
Porphyromonas gingivalisは細胞への強い付着能を保有し,歯周局所にひとたび定着すると容易に排除されない。細菌,P.gingivallisには病原性の強さや血清型の違いから菌株間のheterogeneityがされるようになったが,付着能に関しても菌株による多様性が存在した。こうした菌株の多様性は歯周病の形態や経過にも反映されるはずである。歯周病予防のワクチンを考えるのならば病原性の有無や血清型に関わらない本菌に共通な物質が望ましい。その点,線毛はワクチンとして有望視されているが,菌株間に違いが見られる。そこで,共通な付着物質として菌体外に形成される外膜由来の小胞体(vesicle)のコラーゲン付着能に着目し,この因子の精製とcharacterizationを試みた。(非病原性株)ATCC33277と(病原性株)ATCC43977株,ARCC53977株,W83株の4株を選び菌全体の付着能と菌体から抽出した膜小胞体の付着能を調べた。菌全体では付着能の弱かったATCC53977およびW83の膜小胞体はペリクルだけでなくコラーゲンや血清で覆われたヒドロキシアパタイトにもよく付着した。この付着能は易熱性であり,アルギニンを含むいくつかの合成ペプチドで阻害された。さらにW83株から抽出した膜小胞体から1)両面活性剤であるCHAPSで抽出し,2)ゲル濾過をかけ,3)C-HAに付着させた後にアルギニンを含む合成ペプチドで溶出することにより付着因子を部分精製した。この付着因子は膜小胞がC-HAに付着するのを約50%程度阻害した。SDS-PAGEの分析からこの付着因子の分子量は56,000であった。さらにこの因子には弱いながら血球凝集能も認められたが,西方らが報告しているようなトリプシン活性は得られなかった。今後,膜小胞体からの付着因子がワクチンとして有用であるか否かを検討していくつもりである。
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