研究概要 |
歯周ポケットから高頻度で分離されるPorphyromonas gingivalisは成人の辺縁性歯周炎の発症と進行に密接に関わっている病原菌である。本菌種は細胞への強い付着能を有し,歯周局所にひとたび定着すると排除されない。最近,P.gingivalisには病原性の強さや血清型の違いから菌株間のheterogeneityの存在が明らかとなったが,歯周病予防のワクチンを考えるのなら血清型等に関わらない本菌に共通な付着物質が望ましい。そこで,共通な物質として菌体外に形成される外膜由来の小胞体(vesicle)に着目し,この付着因子の精製とcharacterizationを試みた。さらに,病原性の強い16-1株の菌体表層のタンパクに注目し,細胞外膜からの分離精製を平行して試み,ワクチン候補としての将来性を検討した。付着実験の方は供試菌株としては非病原性株ATCC33277株を,病原性株としてはATCC43977株,ATCC53977株,16-1株を選び膜小胞体の付着能を調べた。ATCC53977の全菌体は付着能の弱かったが,精製されたvesicleではコラーゲンや唾液で覆われたヒドロキシアパタイトにもよく付着した。この付着能はアルギニン,アンギオテンシンやtyr-ブラディギニンによって抑制されたが,6つぐらいのアルギニンを含む合成ペプチドでは阻害されなかった。次に,繊毛の欠損しているATCC53977株のvesicleからこの付着因子を精製したところ,分子量52000の易熱性物質が得られた。 16-1株の外膜からは様々な両面活性剤を利用してタンパク画分を部分精製した。これはペプチドグリカン関連タンパクでSDS-PAGEより分子量は41000と27000であった。しかし,全菌体で免疫したウサギ抗16-1血清とのImmunoblottingでは41000のバンドしかみられず,41000のバンドがimmunodominantであり,ワクチン候補となり得ることが判明した。
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