研究概要 |
咀嚼に重要な役割を果す舌の構造をマクロ的,ミクロ的に調べ,動物によってそれぞれ異なる摂食様式との関連性を解明することを目的としている。これまでに実験動物を含む入手しやすい動物の舌について研究し,舌乳頭における結合織芯が動物の種によってそれぞれ特徴のある立体構造をもつことが明らかになってきた。〓歯目,食虫目,食肉目,偶蹄目,霊長目などの分類上の近遠親関係をも舌乳頭が反映していると考えられるデータが蓄積されつつある。現在霊長目の中にあってツパイ,カニクイザル,ヒトの舌について研究し,下等なものから高等なものに進化するにつれて,舌乳頭の結合織芯も単純なものから複雑な形態のものへと変化していることが明らかになってきた。またヒトの茸状乳頭には胎児期のみに味蕾が存在し,小児,成人では退化してしまうと考えられていたが、今回の研究ではヒトの茸状乳頭には小児・青年はもとより老人にも味蕾が存在することが明らかにされ,他の哺乳類における同様ヒトの茸状乳頭も味覚乳頭の一員であることを明らかにすることができた。設備品として購入できたコンビステレオ(実体顕微鏡)は上皮剥離操作,顕微鏡下の微小解剖や撮影記録に役立っており,研究の精度を上げるのに貢献している。現在さらに,海棲哺乳類の仲間であるイルカ,トドなどの舌について研究をすすめている。
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